シンプルになる

雨が降ったり止んだりどっちつかずの天気が続く3連休の真ん中の日に、新宿三丁目にある画材量販店の老舗として有名な「世界堂」にはじめて訪れてみた。
散歩の際などに何度も見かけたこの店舗だけど、自分はもう絵を描くこともないと思っていたので縁遠い存在だったし、正直そんなに時間はなかったのに、
最近なんとなく書いた落書きから出来上がったひとつの絵が自分の内面の何かを刺激したみたいで、この香りのような言葉に置き換えて表現することもできない微かな感覚を逃したくないような気持ちになったからだと思う。

そこでいくつかのペンと紙を買った帰り、特売の額縁コーナーでひとつの小さな額縁も買ってきたのだった。今ある絵をいれるのではなく、額縁の中の絵を想像して書いてみたいと思ったからだった。
それは物言わない観客のように部屋に鎮座して私の絵がふさわしいものに仕上がるのを待っているようで、なんだか面白い。

楽器演奏者の指が好きだ。よく訓練された精密な動きを眺めているだけで自分に染み付いたいらない概念の塵達が払われていくようだ。
自分にもいつかそんな時が来るのだろうか、いつも自分の生み出すものを完成させずに作りかけのものばかり量産しては自分に失望してきた私に。

今回書き終えた絵はやっぱりまだ落書きに毛が生えた程度のレベルで、額縁に入れるものではなかったけど、それでもそんな思いを懐かしく感じながらペンを入れたこのうちの猫の似顔絵はいつか思い出して眺めたい日が来るきがして、こうして残してみることにしたのでした。

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